あひるの仔に天使の羽根を
思い出してすっきりする。
あの女の、ピンク色の部屋もこんな感じで息苦しかった。
逃げ場がないような、何かが覆い被さってくるような圧迫感。
そういえばあそこにも、窓はなかったよな。
「ねえ……」
気づけば、隣に居た芹霞がじっと俺を見上げていて。
「煌も……好きなの?」
「あ?」
「あの子のこと」
不安に揺れて…苛立ったような眼差し。
嫉妬してくれたのか、とは喜べなかった。
「俺……言ったよな」
逆に気分が悪くなる。
悲しくて堪らなくなってくる。
「俺が好きなのは、お前だって」
怒りを少し交えての言葉は早口で。
「もう…忘れたのか?
そんなもんだったのか、俺の真剣な言葉…」
言葉尻は、次第に震えていく。
「……あ」
思い出して気まずそうに俺から顔を背けた、そんな芹霞の反応に、俺は堪らず芹霞の頭を片手で抱いて、俺の胸に押し付けた。
「直ぐに忘れるなよ。
俺、冗談で言ったんじゃねえんだぞ?」
感じろ。
俺の早い鼓動を感じてくれ。
「心のもっと深い処に、俺を刻みつけてくれよ。
二度と、そんな酷いこと言うなよ。
俺……」