あひるの仔に天使の羽根を
「なんのことだい?」
「……!!! 力使えるようになった途端、それかよ!!?」
「………。僕は……電磁波から、女の子の身体を護って上げようとしてただけだけど?」
「違うだろうよ、結界張って俺に攻撃しただろうが!!!」
「……結界とは、害を為す者を弾くもので、正当な動きだと思うけれどね」
淡々と語る玲くんの口調に、寒気を感じるのは気のせいだろうか。
「俺を害と思うのなら、お前だって俺と同じように動けばいいだろう!!? 裏から力に頼って牽制するなんて、陰険じゃねえか!!?」
「……これが僕なんでね」
嘲るような口調なのに、端麗な顔に浮かぶのは悲痛な表情。
「煌!!! やたら玲くんに噛付かないの!!!」
あたしは不機嫌な面持ちで、煌の足を踏んづけた。
「玲くんも!!! そんな顔するくらいなら昔の嘘笑いの方がまし!!!」
あたしは玲くんの両頬を伸ばした。
「2人共そんなに運動不足でストレス堪っているなら、桜ちゃん助けた後に、思う存分闘えばいいでしょ!!? 気の済む限り。あたし止めないから!!!」
煌も玲くんも、突然割り込んだあたしの行動に吃驚したみたいで。
「……お前さ。何のことで玲ともめてるのか、判ってる?」
「さあ? 理由あったの?」
ストレス堪って、鬱々としていたからだと思ったんだけれど。
煌が何か言いたげに黙り込み、玲くんが溜息をついて項垂れた。
そして玲くんは、悲しげな上目遣いであたしを見て、
「ごめんね?」
あたしは玲くんの、こういう顔と素直な言葉に滅法弱い。
即座にご機嫌になって玲くんを許すあたりは、自分でも甘いとは思うけれど、よく考えて見ればあたしに玲くんを裁く権利はない。
「……絶対、玲は確信犯だ」
そうぼそりと、忌々しげに呟く煌の声が聞こえたけれど。
だけど、あたしはじゃれあいを通り越した、険悪な関係にはなって欲しくない。
出来るならば、ずっとずっと皆で馬鹿やって楽しく騒いでいたいから。