あひるの仔に天使の羽根を


違いがあるとすれば、大きい天蓋から長く伸びたピンクのドレープカーテンが、ベッド全てを覆い隠せるくらいのものだということぐらいで。


「娘さんはどんな子なの?」


「容姿は……判りません」


「え? 話し相手だったんでしょ?」


「お嬢様は寝たきりで、皮膚に昔紫外線でやられた火傷の痕があるのを気にされていたので、こうしてカーテン越しでお話していたんです」


玲くんがそのカーテンを両手で開く。


中には誰もいない。


壁には薄型の大型テレビがかかっている。


「やっぱりいないね……」


寝たきりで、認証登録されていない少女が、どうやって外に出たのだろう。

やはり誘拐説が濃厚だと思うんだけれど。


「……ねえ。寝たきり、だったんだよね?」


「はい。全て刹那様が甲斐甲斐しく面倒をみてらっしゃいました」


玲くんは、ベッドの上を手で触っている。


何をしてるんだろう。


「寝たきりなのに、随分と綺麗過ぎるベッドだと思わないか? シーツにも皺1つない」


そう言われれば、奇妙なくらいに綺麗だ。

布団もない。枕もない。


仮に彼女が外に出たとして。


布団や枕は必要なんだろうか。

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