あひるの仔に天使の羽根を
 
そんな時玲くんが、


「ねえ、煌。1つ頼まれてくれないか?」


「何だよ」


「イクミの護衛」


「は?」


そして玲くんは、身を屈ませてイクミを覗き込んだ。


「ねえ、イクミ。君は裁縫出来る?」


突然変なことを聞き始めた玲くん。


「え、まあ」


「じゃあさ、ナイロン糸や針持ってる?」


「以前刹那様に頂いたものが家にありますが……」


すると玲くんはにっこり笑った。


「僕至急で使いたいんだ。このオレンジと一緒に取ってきてくれるかな」


「おま…こんな時に裁縫かよ!!?」


しかし玲くんは煌を完全無視して。


「またあの神父達に襲われることのないよう、このオレンジは役立ってくれるはずだからね。

お願い?」


玲くんの上目遣いに勝てる女の子が居たら、教えて欲しい。


イクミの顔は真っ赤だ。


煌が喚きだした時、玲くんは煌の耳元で何かを囁いた。


すると煌はびくっと身体を震わせて、一瞬あたしを見た後、慌ててイクミを連れて出て行った。

何だというんだ。


唖然としているあたしに、玲くんはゆっくりと近づいてくる。
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