あひるの仔に天使の羽根を

「大丈夫でしょうか?」


泣きそうな顔を向けてくる。


「大丈夫。君も見ただろう、あいつなら乗り切れる」


「だけど…黄色ではなく…紫の神父達だったんです」


「紫?」


「神父達は階級があります。一番下は黒、次は黄。それと比較にならない程強くて恐れられているのが、教祖様の代行を認められる…3人の白。紫は白の命令で、暗躍する男達でその数未知数と言われ、私も見たのは初めてです。とにかく黄と紫の差は歴然で……」


紫――

船の上での暗殺者達の色。


白――

煌の腕を切りつけたあの女の色。


あの女が、紫の神父を指揮して船で襲ってきたのか。


何のために?


そもそも、修道女と神父の立場は同じなのだろうか。


紫の修道服を着る芹霞は、何処からこの服を調達したんだろう。


「紫相手なら、きっとあの人無事じゃないかも!!!」


正直、惑う。


煌は病み上がりで、動きが大分ぶれて、いつものキレと勢いがないのは明らかで。


そんな煌を1人残していいのだろうか。


また負傷したら……。


だけど。


今、芹霞を助けられるのは、僕しかいなく。


櫂に譲ったあの時とは違い、僕だけしか芹霞を救えない。


もしも。


芹霞よりも煌を優先して加勢をしたら。


煌の矜持を傷つけ…屈辱を強いることになる。


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