あひるの仔に天使の羽根を
「お前、"神格領域(ハリス)"と"中間領域(メリス)"の間にある、この家の外壁と同じ素材で出来ている歪な…お前の言う"トゲトゲ"の建物で、格闘場でのゲーム対戦を見たか?」
煌は首を横に振る。
「『KANAN』は仮想現実がウリの格闘ゲームでね、魔法が使える。そのチビ陽斗の魔法と同じものを、式典で司会者がデモとして披露してた。たかだかゲーム如き、教祖代行を務める"白"まで駆り出されて参加なんて、おかしすぎる。余程暇でもない限り。何か言ってなかったか?」
「チビ陽斗…俺が"火"の属性だとか相克なら楽しめたとか、総当たり戦になるとか、意味ない"選別"に素人を使うべきじゃなかったとか、色々言ってたな。それ…全部ゲームのことだったのかな」
思い出すような煌の言葉。
「『KANAN』において、天使10人悪魔10人が使える魔法の属性は、"火"、"水"、"風"、"雷"、"地"の典型的な5つだ。火は水に弱く、水は雷に弱く、雷は地に弱く、地は風に弱く、風は火に弱い。そんな魔法と体術を駆使して、勝ち上がる対戦型ゲームだけれど…総当たり戦だって?」
不意に僕の脳裏に、僕が拿捕された時の黄色い神父の世間話が蘇る。
――なあ、俺達の登録はまだか?
――機械に登録が済めば、参加権利はあるんだろう?
――待ちに待ったこの土地全体でのサドンデス。教主様も粋なはからいをしてくれる
「登録って…何だ? たかがゲームに…しかも外部から集ったというのに…」
――食わないでくれッッッ!!!
――全て嘘だったんだッ!!!
――意味ない"選別"に素人を使うべきじゃなかったとか。
"選別"って何だ?
「ゲームに……意味があるというのか? 素人を集ったのは新作披露ではなく他に意味があって…実際の対戦するのは機械への登録が終わった者? 何で外部から人間が必要だ?」
僕の呟きを、煌が受けた。
「そう言えば、チビ陽斗…"自動"登録(エントリー)"が叶った"とか言ってたけど…」
「自動?」
僕はノートパソコンのキーボードで、即席の追跡プログラムを作る。