あひるの仔に天使の羽根を
 

「どういうことだ?」


「名前が消えるということは、ゲームから脱落したんだろう。

だとしたら、今こうしている間も、大規模なゲームは続いている。

そうして新規に増え続ける登録者は此の地の神父達を巻き込んで、"サドンデス"状態になり、最後の1人になるまで続けられるのかも知れない。

本来は20人で1人の優勝者を決める、トーナメント戦だったはずだ。

そして……ゲーム脱落者である敗者は相当のペナルティがある。

……多分、喰われる。煌が見たという"生き神様"に」


「は!?」


「お前が見たという、背中に"bub"という烙印についた死体。

それがその証拠だ。僕が見た時は"Beelzebub"、彼は外部からの先行体験応募者だった。恐らく、ゲームでは10体の悪魔のうちの1つだと思う」


煌の目は見開いている。


「話を戻すけれど、ゲームの魔法力をチビ陽斗が持つというのなら、恐らくこのデータの何処かに登録されているはずだ。

その彼が紫堂に敵意をもち、そしてその状況の中に紫堂に呼ばれたというのなら。

恐らく僕達は、"誰か"の思惑通り、"何か"に巻き込まれている」


「………」


「しかし煌、よくそんな彼と相対して切り抜けられたね」


僕がそう言うと、煌は面白くなさそうな顔で頭をがしがし掻いた。


「止めに入られたんだよ、紫色の神父に。それで渋々あいつはそれに従ったんだ」


「紫?」


白の下にいる紫が、上の白を従えたのか?


「榊……とか言ってたな、紫の奴。ああ、そう言えば、チビ陽斗の名前は、司狼とか言ってたわ。教祖が俺と司狼…チビ陽斗の闘いは望まないからって榊が止めて、そん時にチビ陽斗が教祖の名前が"刹那"って漏らしたんだ」


「………」


「で、その榊って奴が、偃月刀がある為にトゲトゲに入れなかった処を、通してくれたんだ」


「………」


「チビ陽斗以上にあの男はやばい。桜を知っている感じだが、桜の反応は好意的じゃねえな。大体、あの桜がやられたんだし」


「!!! "断罪の執行人"か!?」


「判らねえ」


誰が味方で誰が敵なんだ?

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