あひるの仔に天使の羽根を
美しい女性の姿態から放たれるのは、"男"の視線。


あたしは、そう感じた。


途端に玲くんが、玲くんじゃないみたいで怖くなる。


知らない男みたいで、怖くなる。


掴まれた腕に更に力が込められ、あたしが身震いした時、


「ごめん……」


玲くんはあたしから手を離し、くるりと背を向け天井を仰いだ。


重い沈黙。


その時、見計らったかのようにノックの音が響き、部屋のドアが開いた。


「あの……よろしいでしょうか」


男の子の格好をしたままの桜ちゃんだった。


眼鏡は外されているが、可愛い顔立ちは変わらない。


伏せ目がちで大きな目をくりくり動かして、少々躊躇いながら言った。


「櫂様が目覚められまして、芹霞さんのことを心配なさり…。


今、煌が櫂様を制していますが、その出来れば……」


あたしは頷いた。


「連れてって」


早く部屋から出たかったのは、


玲くんとの空気が重たかったからなのか。


それとも櫂に早く会いたかったからなのか。


1人玲くんを残して部屋を去るあたしには、玲くんの声が聞こえていなかった。


「そろそろ……限界かな…」


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