あひるの仔に天使の羽根を
そして程なく見えた分岐点。
地面に寝そべる黒い神父。
先客の置き土産か。
地下からは悍しい瘴気が漂っていて。
2ヶ月前の、藤姫の儀式の間を彷彿させる。
それは紫堂の力さえも弾いた、未知なる暗黒の力に覆われていた空間で。
まさかこの先に居るのではと危惧したけれど。
もう一方の道には、玲様の長い髪の鬘が転がっていて。
だとしたら、少なくとも玲様が居るのは地下ではないと。
地下に踏み込むには、相応のリスクを覚悟しなければならない。
そう思う程、流れ出る瘴気は大きいものだ。
地下には居ない。
玲様も芹霞さんも煌も。
私の直感は告げている。
だから私はそのまま真っ直ぐに道を駆けた。
第二の分岐点が見えてくる。
再び地下と、そして行き詰まりのはずの壁の穴。
今度の地下からは瘴気は感じられないけれど、わざわざ壁に穴を開ける剛胆な素人はいないだろう。
穴があるということは、地下以外の道が必要だったからだ。
私は、躊躇うことなく穴を潜った。
途端に明るくなる景色。
太陽は傾いて、夕方近くになっている。
周囲を観察すれば、何か背の高い建物の裏側に出たようだ。