あひるの仔に天使の羽根を


そして程なく見えた分岐点。


地面に寝そべる黒い神父。


先客の置き土産か。


地下からは悍しい瘴気が漂っていて。


2ヶ月前の、藤姫の儀式の間を彷彿させる。


それは紫堂の力さえも弾いた、未知なる暗黒の力に覆われていた空間で。


まさかこの先に居るのではと危惧したけれど。


もう一方の道には、玲様の長い髪の鬘が転がっていて。


だとしたら、少なくとも玲様が居るのは地下ではないと。


地下に踏み込むには、相応のリスクを覚悟しなければならない。


そう思う程、流れ出る瘴気は大きいものだ。


地下には居ない。


玲様も芹霞さんも煌も。


私の直感は告げている。


だから私はそのまま真っ直ぐに道を駆けた。


第二の分岐点が見えてくる。


再び地下と、そして行き詰まりのはずの壁の穴。


今度の地下からは瘴気は感じられないけれど、わざわざ壁に穴を開ける剛胆な素人はいないだろう。


穴があるということは、地下以外の道が必要だったからだ。


私は、躊躇うことなく穴を潜った。


途端に明るくなる景色。


太陽は傾いて、夕方近くになっている。


周囲を観察すれば、何か背の高い建物の裏側に出たようだ。


< 695 / 1,396 >

この作品をシェア

pagetop