あひるの仔に天使の羽根を
 
「お前が"玲"?ああ…何処かで見た顔だと思ったら、宴の時の女…女装だったとはね。笑っちゃうよね、そんな悪趣味。よくせりもそんな気持ち悪い奴を迎えに行ったよ。放っておけばいいのにね、そんな"圏外"」


今、玲様は何を思っているのだろう。


"せり"と馴れ馴れしく呼ぶ久遠の…破壊的な美貌を走査しているのか。


それとも。


自分に向けられる"敵意"について考えているのだろうか。


芹霞さんは意識がないみたいだ。


その身体は青光に覆われている。


玲様は力が戻ったのか。


そして馬鹿蜜柑の手にある偃月刀。


どうやら私達は、守護石が使えるようになったらしい。


「……各務の嫡男が、何の用?」


玲様は静かに訊いた。


「ふうん。すぐぎゃあぎゃあ騒ぐ紫堂櫂よりもマシだね。年の功? それに比べてそこの…"煌"だっけ? 不躾だよ、そんなにあからさまに睨み付けるもんじゃないよ」


「何だって!!? もう1度言ってみろよ!!?」


ああ、あの馬鹿蜜柑。


折角玲様が、久遠の真意を探るために抑えたのに。


あの馬鹿は、感情のままに偃月刀を久遠に突きつけてそれをぶち壊す。


「だからさ。軟弱なオレに喧嘩ふっかけるなよ。そんなことしなくても、オレがお前に敵うわけないじゃないか」


「………。どうかな?」


玲様の鋭い眼差し。


馬鹿蜜柑は怒りのあまり流してしまっているけれど、玲様は見抜いたようだ。


馬鹿蜜柑をも翻弄できる、優れた体術の持ち主だということを。
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