あひるの仔に天使の羽根を
:或る心象風景 4.
充分に――
判っていたのだ。
彼の者に関わりあうのは、我が身の危険。
彼の者と交じわうのは、禁忌なことだと。
充分に判っていたのだ。
彼の者の美しさは、醜い私の永劫の憧れ。
彼の者だけが、真の私を解放出来るのだと。
――所詮私は、醜いあひるの子。
異分子の戯言など最早弁解にもならないけれど。
馨しき薔薇に魅せられたのは、私の罪。
荊棘の罠に気づかなかった、私の罪。
例え待ち受ける先が破滅であろうとも、
それでも私は貴方から逃れられなかった。
もう――全てが遅すぎたのだ。
……ああ、残酷な貴方の微笑よ。
私の全てを縛り狂わした、その美しい微笑が、
そしてまた私を堕としていく――。