あひるの仔に天使の羽根を
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拡がる真紅に耐えかねて、あたしは目を覚ました。


視界に飛び込む天井の白色が、忌まわしい赤色を塗り替えていく。


枕元のカーテンから零れるのは陽光。


慌ててカーテンを開けてみれば、白けた風景が拡がっていて。


壁の時計を見れば、朝の8時を針は示している。


此の地において、あたしの手首にある時計は相変わらず狂ったままだれど、この壁の柱時計の時刻が正しいのなら、あたしの記憶は半日以上飛んでしまっていることになる。


とりあえず立ち上がってみる。


あたしの着衣は、紫の修道女のワンピースではなく、あたしのものではないニットのカットソーにデニムのスカートで。


着替えた覚えなど、勿論なく。


見渡してみる部屋の作りは……


「各務家!?」


最後の記憶を思い返してみる。


玲くんと会って、玲くんに傷がばれて怒られて、虐められ(?)て……


慌ててカットソーを捲り上げて見た傷口は。


退院した時ほどではないけれど、まずまず落ち着いた色をしていて。


目立たないけれど判る、真新しい縫合痕。


傷口が開いていたんだ。


恐る恐る触れてみれば、あの時感じていた熱さも痛みもなく。


少し、突っ張った感覚があるだけ。


感じていた痛みが夢幻だったようにも思えるけれど、


「きっと玲くんだ……」


そうに違いない。



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