あひるの仔に天使の羽根を
 





「やめろッ!!!」





耐え切れず叫んだ俺を覗き込んでいたのは、褐色の瞳。


「櫂、大丈夫か!?」


思わず惹きこまれるような、神秘的な黒い瞳ではなく。


真っ先に飛び込んでくるはずの瞳ではなく。


だからより一層、不安になった俺は叫んだ。


「芹霞は何処にいるッ!!?」


ベッドから立ち上がろうとした俺は、途端に背中に激痛を感じて蹲る。


「おい、お前怪我してんだから、寝てろってッ!


芹霞は無事だ。玲が芹霞を診ているから」


2人きりか!?


それが俺の燻る想いを益々煽る。


夢の中の芹霞は、俺の中の誰を見ていた?


――玲、だったのか?


俺の悪夢は、思った以上に俺を切り崩していて。


「~~ッ、だから寝てろって。暴れるな、櫂ッ!!」


煌が羽交い絞めで俺を押さえつけようとする。


「殴るなッ!!! 落ち着けッ!!!

桜ッ!! 芹霞んとこ行って、動けるようならここに連れて来いッ!!!」




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