あひるの仔に天使の羽根を
「優しいのって、久遠じゃないね…」
何だか笑ってしまったのだけれど。
「オレを知った顔、しないでよ、気分悪い。
大体ね、オレがどうしてそんな能面みたいな不気味な顔向けられなきゃならないのさ。夢でうなされそうで嫌なんだよ。
後できっちり利子つけて請求してやるから覚えておいて。
だから、我慢しないでわんわん泣けば?」
「………っ」
口は悪いけれど、そう言われると嗚咽が込み上げてきて。
「言っておくけど、胸は貸さない。期待してたら、ご愁傷様。オレはこれからまた女を抱くんだ、身体を汚したくない。
勿論、抱いて慰めるなんて気持ち悪い事もしないからな。考えただけでも虫酸が走る」
「………ははっ」
ここまではっきりと嫌な顔されれば、笑いしか沸き起こらない。
「泣くか笑うかどちらかにしろ、薄気味悪い」
久遠が本当に、綺麗な顔を不快に歪ませるから。
そんな剥き出しの気持ちが嬉しかったから。
「――……櫂ッッッ!!!!」
あたしは慟哭した。