あひるの仔に天使の羽根を
俺よりも強い絆を信じていた櫂に
俺にもわけ判らねえ程本当突発的に
一方的に突き放されたんだから。
あいつの心思ったら。
何だか今の俺の心なんてちっぽけのものに思えてしまって。
凄く――
哀しくなって、やりきれなくなってしまった。
そんな時、横から肩を叩かれて。
近づく気配に気づかない俺も俺だけれど、それは俺の見知らぬ女だった。
芹霞が着ていたのと同じ、紫紺の修道女の服を着ている。
敵意はないが…何かおかしい。
表情が…端的に言えば"ぶっ飛んで"いる。
焦点の合わない…物欲しげな目。
口端から漏れている唾液。
それが酷く淫靡で。
「……しよう?」
俺が訝しげな目を細めると、女は艶美な笑いを口許に浮かべて、俺の手を取り、自分の大きな胸を触らせた。
「ねえ……しよう?」
ふわり。
雌の香りが漂った。
それは男を誘う淫猥な匂い。
「………」
"しよう"の意味が判らねえ程、俺は子供じゃない。
此処には、廃れた俺の心を静める香水女はいない。