あひるの仔に天使の羽根を


「ねえ、しよう……?」


俺の首に回される腕。


嫋やかな女体。


数ヶ月前の俺なら、手を出していたかも知れねえ。


だけど今。


俺の心がどんなに乱れていようと、


「お前じゃ役不足だ」


触れ合いたいのは芹霞だけだから。


雌犬には用はねえ。


完全拒否。


威嚇した俺に、それでも色仕掛けで迫るうざい女の喉元を


「……去れ」


俺は片手で掴んで。



気分が悪い。


感情が冷え込む。



そんな時、斜め向いにあるドアが開いて。


出てきたのは各務久遠。


男の俺でも、思わず吸い込まれる程の美貌は相変わらずで。


女の首を締め上げている俺の目と、冷たく光る瑠璃色の瞳は交差して。


そして。


その身震いするほど整った顔には相変わらず表情はないまま、だけど本当に嫌々…あからさまに煩わしいというようなわざとらしい溜息をつきながら、


「その女、色情狂だから」


近づいてきて、そう言った。


今、こいつ…平然と凄えこと言わなかったか?



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