あひるの仔に天使の羽根を
 

「ふうん、お前も惚れてるの、せりに」


"お前も"


ああ、ムカツク。


それ以上に――


「お前も趣味が悪いね」


芹霞に無関心な久遠の態度が腹立たしい。


俺、芹霞を抱きたいのを我慢してるんだぞ?


それくらい、芹霞はいい女なんだぞ?


そう思った時には、矢継ぎ早に出てくる言葉に制止が出来なくなった。


「芹霞の唇は甘くて柔らかくて、きめ細やかな柔肌は白くて、吸い付くとすぐ赤くなるし。いい匂いして抱き心地満点で、胸も…大きいみたいだし。弱い耳とか攻めると、潤んだ目をして可愛い声で啼いて。とにかくむしゃぶりついて離したくなくなる程美味いんだよッ!!!」


久遠は――

可哀相な子を見るような眼差しを向けていた。


「真っ赤な顔して…純情男っていうわけでもなさそうなのに…。

限りなく主観を多く織り交ぜて、そんな力一杯力説しなくても判ったから。お前とせりは大した処まで進んでいないって」


「な、なななッ!!!」


「どうでもいいけどさ、行かないの、せりの処。それともオレが行って、お前の望み通り、この女みたいに狂わせて毀していいの? それもいいか、せりも悲しみ薄れて。まあ違った意味で泣き続けるだろうけど」


「~~ッッッ!!!

いいわけねえだろ!!?

どれだけ"自信"あるんだよ、お前!!!」


「さあ? 毎日数こなせば、行き着くんじゃない? その域に」


何か恐ろしいこと平然と言いやがる。


そうか、数こなせば……。


ちらりと見る、色情狂だという女。


いやいやいや、オレ今何考えた?


決して、この女を芹霞とだぶらせてないって。

ここまで求められてみたいなんて思ってねえって。
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