あひるの仔に天使の羽根を
「凄く……判り易いね、お前…。その歳でそこまで真っ赤になって、やることはやってんじゃ…詐欺だよね…」
その声で俺は我に返り、久遠を睨み付けると、芹霞の居る部屋に走った。
「芹霞!!!」
俺の大きな声に、ベッドに腰掛けて泣いていた芹霞は顔を上げた。
すげえ涙の量。
赤く腫れた瞼。
凄く心が苦しくなって、俺は芹霞を抱きしめた。
芹霞はされるがままだったけれど、やがて俺の胸の中で嗚咽を漏らした。
芹霞の心が言葉で俺に向けられることはなかったけれど、だけどこの温もりから、芹霞が何を考えているのか判っちまう。
本当、幼馴染って辛いよな。
相手が例え、自分にとって嫌なことを考えていようと、だけど哀しそうにしていたら放っておけない。
他人のフリなんて出来やしない。
あやすように、芹霞の背中をポンポンと軽く叩いてやると、芹霞は更にぎゅっと俺に抱きついてくる。
切ないよな。
櫂のことを考え、櫂のことだけ思ってる芹霞。
その中に俺は入れないのかな。
そう思ったら――
「なあ……俺じゃ、櫂の代わりは出来ねえか?」
思わずそう言葉を零していて。
「お前を構成する世界に、俺って入ってねえのかな?」
芹霞からは返答がなく。
「櫂に求めている永遠……
俺に求めてくれよ」
俺は潰すくらい強く、芹霞を抱きしめた。