あひるの仔に天使の羽根を
「俺は……ずっと傍に居る。
泣かさねえよ、約束する。
だから、なあ……」
一旦言葉を切り、そしてひりついた喉奥から吐き出した声は…小さく震えて…掠れきっていた。
「俺じゃ――…駄目か?」
だけど。
やはり芹霞の反応がなくて。
それが辛くて、苦しくて……。
胸だけがきゅうきゅう締め付けられて。
肯定してくれって、懇願しそうになる。
俺をぎりぎりで支えるのは男の矜持。
唇を噛んで、譫言のように呟く。
「櫂だけが男じゃねえだろ。櫂だけが幼馴染じゃねえだろ。お前を理解したい奴は、理解出来る奴は…他にも居るだろ。
俺は、そんなに頼りねえか?」
「……煌」
「芹霞……お前の"永遠"をくれよ…」
心が……苦しくて。
求める心が大きすぎて。
「ねえ……煌」
気づけば。
芹霞が、知らぬ間に流していた俺の涙を手で拭っていて。
顔を見合わせたまま、しばらくの沈黙の後に、芹霞が言った。
「……煌はいつまでも煌で、それはこれからも変わらない」
ずきん、と胸が痛んだ。
つまりは。
俺は、今の立ち位置以上の昇格を拒否されたのか?
「煌の代わりが誰にも出来ないように、櫂の代わりは誰にも出来ない。代わりが出来るような、そんな安直な付き合い方、してきたつもりないよ?」
俺は、邪険に扱われているわけじゃねえ。
寧ろ、大切にされているのだろう。
だけど櫂以上にはなれない。
俺にはそれだけでも十分だと、本当は満足すればいいのだろう。
だけど。
言葉に想いを乗せてからは、どんどん欲張りになっていて。
それは。
俺が欲しい答えじゃない。