あひるの仔に天使の羽根を
 
俺は芹霞の手を引き、止めとばかりに唇を奪う。


ああ……駄目だ、止まらねえや。


「んんっ……こ…う、ぎゅ…だけ…んんッ!!?」


ぎゅうだけ?

知らねえよ、んなこと。


それで抵抗?

俺を煽るだけだって。



「んんんっ……だ…め…ハァ…ん」


芹霞のいい匂いにくらくらし、柔らかな唇だけじゃもの足りず、俺の舌は芹霞の唇を強引に割る。


芹霞の熱い腔内を犯す俺の舌尖。


「あ…ンっ……こっ…はぁ…」


漏れ聞こえる芹霞の声に、息苦しさだけではなく、甘さが混ざり始めれば、雄の悦びに胸が震える。


もっともっと。


俺のことだけ考えてくれ。


櫂のことなんか全て忘れて。


俺だけを感じてくれ。


「……せ…り……」


俺もお前だけだから。


逃げ場がないよう追いつめているはずが、追い詰められてるのは俺の方で、絡めた舌の淫らな感触に意識を失いそうで。


こんなにもこんなにも。

俺は芹霞に溺れ、全てが欲しくて堪らない。


吐息1つ残さず、芹霞の全てを俺のものにしたくて仕方がねえ。


「…ハァ…好……きッ…だ」



伝われ。


俺の想い…少しでも届け。


溢れる想いと懇願に、芹霞を貪りたい強い衝動が俺を壊しそうだ。


ああ、何でこんなに辛い?


早く楽になりてえよ。


だけど


今は――



ここまで、だ。



俺は呼吸を止め、ぎゅっと強く目を閉じた。


欲望は膨張して、蛇の蜷局(とぐろ)のように渦巻いてる。


そこから俺は、故意的に目をそらす。


「………」


少し唇を離して、芹霞の反応を窺い見れば。


俺と芹霞の唇を繋ぐ、銀の糸。
つつ…と糸をひき、俺達の視界の中で消えていく。


ざわめき出す、欲情。


だから太股の肉を力一杯抓る。
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