あひるの仔に天使の羽根を


「芹霞待て!!!」


芹霞の後を煌が追う。


芹霞にはきつい現実かも知れないけれど、あいつを癒す相手は他に居る。


あいつが誰を選ぶのかは判らないけれど。


後のことは、皆に任せよう。


そう思っていた時、俺の腕は玲に捻り上げられた。


それは本当に一瞬のことで。



「お前…芹霞に何をしたのか、判っているのか」



低く――

まるで敵を前にした威嚇のような声だった。


いつも微笑みを湛えている端麗な顔は、拷問時に見せるように荒んだ冷淡なもので。


「玲?」


俺は何故、そんな顔を向けられているのかが判らず、その名を呼んだ。



「お前、取り返しのつかないことを言ったんだぞ!?」


俺は目を細めた。


「須臾を好きだと言ったことが?」


「違う!!! 須臾に"永遠"を向けたことに!!!」


どうして玲がここまで怒っているのか判らない。


そして――ふと思う。


「あいつ…俺が好きなのか?」


だから、玲が妬いているのか?


「――…ッ!!!

自惚れるなッッッ!!!」


途端、凄まじい衝撃が俺の頬に走る。


何とか1歩後退するだけで踏みとどまった俺。


殴られたのか、玲に?
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