あひるの仔に天使の羽根を
衝撃を受けた。
今まで、玲は俺に手を上げたことはないから。
何より、こんなに攻撃的な態度を示したことはなかったから。
「思い出せ、櫂。
お前が本当に愛してる女を」
それはとてつもなく低く心に響いて。
「本当にその女か!!?」
何かが呼応したようにちくりと心が痛んで、朧気な何かが頭に浮かんだけれど、それを振り切るように頭を一振りすれば、俺の胸元の…チェーンでぶらさげた須臾の金緑石が、ゆっくり横に揺れて。
その揺らめきに頭がくらくらして。
同時に視界に入るのは須臾の顔。
心配げなその顔に、俺は堪らなく切なくなった。
「馬鹿言うなよ。俺は須臾だけを今まで愛してきたこと、お前はよく知っていたじゃないか。今のお前の物言いでは、まるで俺が芹霞を愛しているみたいに聞こえるぞ、取り消せよ」
そう俺は悠然と言い放った。
しかし玲は何を言わず、俺を更に強く睨み付けてくるばかりで。
場の緊張感。
奇妙な静寂。
桜も遠坂も何も言わない。
ただ、俺に対して好意的ではないことは判る。
だから――俺はいらついて言った。
「俺が好きなのは、須臾だ!!!」
今度は鳩尾に玲の拳が入った。