あひるの仔に天使の羽根を
 


咄嗟に俺は須臾の頭を胸に抱く。


「須臾は関係ないだろう!!!」


しかし須臾に向けられている鳶色の瞳は、段々と温度を無くしていくばかりで、


「……櫂。お前の胸にある金緑石を渡せ」


玲は俺に手を延べた。


「は?」


「瘴気漂うそんな禍々しいものを、早く捨てろッ!!!」


声を荒げた玲。


「禍々しい? は?」


こんなにも、澄んだ気を持つ崇高な須臾の守護石が、瘴気?


「お前……どうしたんだ? 死にかけておかしくなったか?」


そう訝しげに顔を顰めた俺が気に喰わなかったんだろう。


玲は何も言わず俺の懐に手を突っ込み、金緑石を奪い取ろうとした―――時。


須臾の胸元にある闇石が反応して発光し――玲を弾いた。


そう。


俺の血染め石が、俺の意思とは関係なく、勝手に俺の力を使ったんだ。


そんなこと、今までにはなかったことで。



「私がいる限り、櫂を奪わせない」


須臾の凛とした声が響いた。


「去れ」


それは、俺さえも目を細めるくらいの毅然とした態度で。


「去らずに邪魔するなら、痛い目に遭わせる」



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