あひるの仔に天使の羽根を

「……へえ、僕を脅すの? 悪いけど、そういうの効かないから。僕は君が大嫌いだから、思い通りになるなんて思わないで?」


「お、おい玲……」


俺を無視して、明らかに敵意だけをぶつけ合う玲と須臾。


「ふふふ、貴方をどうこうするつもりはないですわ。貴方も美しいですから。だけど貴方の大切な方……更に突き落としたら何処まで転がり堕ちるんでしょうね。それだって、貴方には"痛い"でしょう?」


玲が目を見開いて手を上げようするのと、桜がその手を止めるのが同時だった。


「玲様、ここは耐えて下さい」


それはもう泣きそうな声で。


「芹霞さんが苦しむのを、桜は見たくはありません!!!」


その悲痛な叫びに。


俺の頭がずきんと痛んだ。


俺は須臾が好きで。


須臾を安心させる為に芹霞を切り離して。


その結果、玲も桜も…煌も。


皆が俺に…須臾を牙を剥いて。


こう……だったか?


俺が恋情を打ち明けた時、皆の態度はそうだったか?


俺は。


愛しい女を大事にしたい気持ちが大きいのと同時に、皆のことも大切だ。



どうして須臾を認めない?


須臾の何処が気に喰わない?


諍いなんて、俺は起こしたくないのに。




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