あひるの仔に天使の羽根を

更にしつこく問い続ける私に、


「………。姉の部屋、見ましたか?」


溜息交じりに質問してくる千歳。


私は頷く。


「子供じみた、空気の重苦しい部屋。そして、異様な視線を放つ人形…」


何か――

意味があったのか?



「各務の愛の形は歪んでいるんです。容姿が特殊故に」


「え?」


「狂わされたんです。"刹那"に……」


セツナ。


「すみません、僕の言えることはここまでです」


特別に私が聞き出したわけでもなかったけれど。


それでもなぜ初対面の千歳が、私にそんなことを喋るのか気になった。


姉への憎悪ともまた違う、別の感情が見え隠れしている。


だけど私には、それが何なのか判らなくて。


「僕だって……恋してもいいでしょう?」


私に向けられている顔は、至って真剣で。


「え?」


「一目惚れ……。

僕には許されないことなんでしょうけれど」


ヒトメボレ。


まさか。



「――私?」




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