あひるの仔に天使の羽根を


「煌…さん。ただの従僕のくせに…私にその目、気に入らないわ。汚らしい色合いのくせに、私に楯突くなんて身の程知らずが」


「お前何様だ!!? いい気になるな!!!」


あたしは煌の腕を引っ張った。


「煌。この子に刃向かえば、櫂に刃向かうことになる。駄目」


褐色の瞳は焦れた。


そしてあたしは1歩前に歩み出る。


「だけどね、須臾。煌と櫂の関係を知らないくせに、煌をただの"従僕"扱いしたのは許せない」


知らず知らずに低くなる声。

あたしは、須臾を睨み付けた。


「あたしを貶(けな)したいのなら思い切り貶せばいい。だけど煌まで…そんな目で煌を罵るというのなら、あたしはあんたを許さない」


場の空気が張り詰めるのが判る。


「許さない? 何の後ろ盾を持って、私にそんな口きけるのかしら。貴方にはもう櫂の力は及ばない。私が櫂に言って、貴方を痛い目に合せてもいいのよ」


あたしが口を開く前に、煌が怒鳴った。


「芹霞に手出ししてみろ、俺がお前を殺してやる」


煌は――本気だ。


「第一、そんなの櫂が承諾するはずがねえ!!!」


「あら、どうかしら」


須臾は笑う。


「櫂は私に夢中ですもの」


ずきん。


胸が抉られたように痛い。

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