あひるの仔に天使の羽根を
 

「櫂は私に"愛している"を繰り返し、"永遠"を捧げると何度も繰り返し言ってくれました。そして――」


そして須臾は、着物の襟を大きく両手で開けた。


「私に、こんなに鮮やかな証をくれたのに」


須臾の白い肌に点在していたのは。


「どこまで下に続いているか…そして何個あるか、見てみます?」


赤い花弁(キスマーク)。


その尋常ではない数の多さに、あたしはくらりとよろめいて。


身体全体から、全ての血が失われたような感覚になって。


途端――視界が真っ暗になり、後ろから身体を支えられた。



「芹霞……見ないで」



それは玲くんの掠れた声。


あたしは、玲くんの手で目を塞がれているらしい。



「煌……裏にある温室から、久遠を連れて来て」


「ああ!? それ処じゃねえだろうが!!」


「いいから行けッッ!!!」


荒げられた玲くんの声。


やがて舌打ちして走る音が聞こえる。



「……須臾、弟の千歳が死んだよ」



玲くんの低い声。


「あら、そうですか」


「驚かないんだね」


「あんな醜いもの、私には必要ありませんから」


冷たい、淡々とした声。


「まあ…同じ顔した柾叔父様あたりが、今頃狂い泣きしていることでしょうね、彼にとって千歳は特別ですから。うふふふふ」


弟が死んだというのに、何だろうこの人事のような冷たさ。


ぞくり、とした。


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