あひるの仔に天使の羽根を
 

「…嫌い……ではないよ」


悠然としている櫂には珍しい、歯切れの悪い言葉。


だけどそれが、


「お前には……借りがあるからな」


幼馴染としての、欲しくはない優しさ故だと知る。


「義理人情、だね」


櫂は答えず、顔を背けていて。


「そっか…。あたし今まで気づかなくてごめん。いい気になっててごめん。早く厄介払いしたかったよね」


「ちが……いや、お前がいつまでもふわふわしているのを心配して」


もういいや。

もう――いい。


「今までありがとうね、櫂」


腫れ物を触るように言葉を選ばれるくらいなら、


せめて此の手でさっさと終わらせよう。


「大好きだったよ、櫂」


途端、櫂の目が見開いて。


そんなに驚くことだったのかと、あたしは意気消沈したけれど、精一杯笑って見せた。


「あたしは櫂から卒業するから。

だから……須臾と仲良くね」


言えた。


頑張って笑えたと思う。


櫂が何かを言おうとした。


「ああ、安心して。嫌味じゃない。

あたしは櫂に恋愛感情持っていないし。

別に付きまとって邪魔とかしないし」






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