あひるの仔に天使の羽根を
「れ、……んっ…い…」
――舌……搦めて?
あの時を再現するような、そんな激しく深くなる口づけに、
あたしは傍観者がいることもすっかり忘れて。
熱い吐息。
漏れる声。
絡まる舌に、あたしの身体に甘い痺れが走り、涙目で玲くんを押しのけようとするけれど、玲くんはそれを許さない。
いつもの包み込むような優しさはなく。
ただ熱い迸りが一直線に向ってきて。
それがあまりにも大きすぎて、あたしはどうしていいか判らなくて。
玲くんはただの演技なのに。
その迫真の演技に、あたしまで騙されそうだ。
玲くんはあたしを好きなんじゃないかと。
そんなことありえないのにね。
気づいた時には、玲くんに抱きしめられていて。
そこに須臾も櫂も居なかった。
「芹霞……大丈夫?」
玲くんがにっこり微笑んで、また色気を放つから。
「玲くん……やりすぎ」
あたしは完全息が上がった真っ赤な顔で、ぽかぽか玲くんの胸を叩いた。
誰も居ない廊下にあたし達は立っていて。
少しだけ重い沈黙が流れる。
「ねえ芹霞……
本当に付き合おうか」
突然、玲くんはそう呟いた。