あひるの仔に天使の羽根を
「誰ならいいの?」
掠れきった声に、芹霞は少し驚いた顔をした。
「誰の恋人にならなれるの?」
「玲くん……?」
「煌に…傾いたの? だから…自分でキスしたの?」
嫉妬。
間違いなく、これは嫉妬。
「僕には…してくれないの? 僕は煌以下?」
もう――
自分でも何だかよく判らない。
僕だけを考えて貰いたくて仕方が無いのに、僕の言葉は違う処に飛んでいく。
「煌に何言われたの? 煌にどう迫られたの? 教えてよ、どうすれば君の心が手に入るの?」
「ちょ…玲くん!!?」
気づけば怯えたような芹霞が居て。
衝動的な僕が、どんな顔をしていたのか容易に想像がつく。
僕は深呼吸をして、"僕"を落ち着かせた。
「煌とは……判らない」
そう、真面目な顔で芹霞が言った。
「煌は好き。だけどそれは昔からで、煌が大切なのは変わらない。
だけど煌は、あたしと付き合いたいとかそんなことを言っていないし、ただ好きだって言うだけで。今まで通りあたしの傍に居てくれるっていうし、これ以上の変化は…ないと思う」
僕は思わず目を細めてしまう。
「好きだと…言っただけ?」
芹霞が強く頷く。
だから僕は大きな溜息をついて項垂れた。
「……馬鹿な奴…」
鈍感芹霞相手に、想い伝えるだけで終えるなんて。
それは唯の自己満足っていう奴だ。
進展なんか望めない。