あひるの仔に天使の羽根を
「うん。先刻由香ちゃんとイクミに手伝って貰って作業していたら、突然荏原が飛び込んできて」
――お嬢様はおられますか!!?
「作業って…何してたの?」
首を傾げるその姿が可愛い。
「刹那の家から失敬したノートパソコン改良してね、あ、僕の腕時計って覚えてる?」
「うーんと、でっかいデジタルの奴だっけ?」
「あれね、僕の手作りなんだ」
「時計職人もしてるの!?」
「時計のように見えて、機械を改良できるマイクロパーツが入っているんだ。今、それでパソコンを拡張させてる。今のままじゃ、容量不足で動かなくなってしまうからね。僕の力で此の地の電源とは別の方法で起動させて、調べ物をしたいんだ」
「ふうん?」
「此処の地形と、刹那の行方を追うために」
芹霞の顔が神妙なものとなる。
「どうしてそれらを?」
「氷皇の書き置きだよ」
「蒼生ちゃんのって……あの包帯の腹立たしい奴? え? そんなこと書いてあった!!?」
「あの氷皇が意味もなく、字を残すことはありえないからね。
あの一連の文章…"。"の後の、書き出しの字を繋げていったら、文章になる」
『シバラクぶり~、お目覚めいかが、レイクン?』
『ロコツに嫌な顔しないでよ~。ははは。ヘンだって? んー、いじわるぅ。そういえばさ~。うふふふ。…耳障りな笑い方なんて酷いね、これは目障りって言うんだよ。可愛い芹霞ちゃんからはおはようのCHUくらいして貰えたかな?』