あひるの仔に天使の羽根を
 

『たまらずにしちゃったのは君の方か、このむっつりクン。ノシつきで君の元に芹霞ちゃんを贈呈した優しいお兄さんに感謝してね☆ ふふふ。律儀なレイクンなら、感謝はお兄さんの欲しいもので返したいんでしょ? 折角だからね…お兄さん今、欲しいのはランボルギーニのレヴェントンだよ☆』

『ついにオレンジのワンワン、ヘタレ返上したの? ナリフリ構わず言っちゃったんでしょ。ヲトメゴコロに響かなきゃ、口べたな君はただのヘ・ン・タ・イ。おっと~、それから発情と我慢は程々にね。え~だってさ、欲求不満が祟るとワンワン、香水女達を壊しまくるって有名だし☆』


「"しろはへんそうみかたのふり"、"せつなをおえ"」


「……あんなの全文覚えてるの!?」


芹霞……驚く処はそこかい?


『チース、芹霞ちゃん、元気~? 怪我してない? いい加減君に会ってないから寂しいよ~。我慢も限界だよ~。顔見たいのにさ、入院中だってアカが許してくれなくてさ、働け働けって酷いんだ~。義理のお姉さんになるって思えば気が重いよ、でもいいもんね、楽しみはとっとくから……何って…君のハ・ジ・メ・テ☆』


「"ちけいがかぎ"…此処までだね。

僕達が今この"約束の地(カナン)"に居るのは、"シロ"と呼ばれる、氷皇や紅皇と並ぶ白皇の動向を調べる為だ。もしかすると2ヶ月前の藤姫と関係がある」


芹霞は驚いたように目を瞬かせている。


「ゲーム鑑賞じゃなかったんだ」


「……それが目的なら、こんなおかしな処、もうさっさと帰っているよ。といってもまあ、船はないし帰る手段を考えないといけないけどね」


「だけど蒼生ちゃんが此処に来ているのなら、別にあたし達が調べなくてもいいんじゃないの?」


「氷皇は一癖も二癖もあるからね。判っていても、僕達が焦ったりもがいたりしている様を、見て愉しむ男だ」


「否定しない。今もあの胡散臭い笑い声が聞こえるようだわ……」


同感だ。



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