あひるの仔に天使の羽根を
 

「どうして氷皇が此処に来たのかは判らないけれど…もしかしたら何の進展もなくどたばたしている僕達を見兼ねただけかもしれないけれど、調査を放棄して帰ろうものならば、氷皇よりも恐い恐い存在が、鬼の如く仁王立ちして待ち構えているだろう」


「ふへ!!? 誰!!!?」


それは、君のお姉さんだよ、とは口に出せず。


「僕達は紅皇の遣いだ」


「紅皇サンって、そんなに恐い人なの!!?」


「そりゃあもう。身体もボロボロにやられるだろうけれど、それ以上にきっと精神が回復不可能なくらいに叩きのめされるはずだ。

まあ…一番怖がっているのは煌だけれどね」


近くで見ているんだから、判るだろう?


そう思いながら芹霞を見ると、その顔は若干青みがかっていて、妙に慎重な声を発した。


「煌が怖がるなんて……緋狭姉みたいな人だね」


その緋狭さんだ、と突っ込みたくなるのをぐっと堪える。


いつまで、芹霞に素性を隠すつもりなんだろう、緋狭さんは。


というより、芹霞ももういい加減気づいても良いんじゃないか?


だけどそれに気づくような鋭さがあるならば、僕の想いにも既に気づいてくれているだろう。


僕だけじゃない。


櫂や煌の気持ちだって、判っていたはずだ。


「また話が脱線しちゃったね。つまり僕達は心ならずも氷皇から3つのヒントを得た。白皇が変装して更に味方のふりをしているというのなら、僕達はそれが誰かが判るまで誰の言葉も信用出来ないことになる。

だから疑わしい者は証拠を詰めて排除する…消去法でいくしかないと思う。

同時に、地形と刹那を調べないといけない。

それを調べるには、今のままじゃ信じるには疑わしい人間が多すぎて、信憑性がある情報が少なすぎる。一番手っ取り早く全体像を掴むに適しているのが、刹那のコンピュータ内の情報だと僕は判断した。だからそれを参照しようとしたら、逆に神父を使って逆襲された」


コンピュータを操る相手は、"約束の地(カナン)"の指示系統に居る。



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