あひるの仔に天使の羽根を
「……もうそろそろ行くか」
僕は芹霞を見た。
「荏原が各務と僕達全員を1つの部屋に集わせている。
僕は…樒をイクミに確認させたいんだ。
彼女は刹那の娘の顔を見たことなくても、声だけは聞いているからね」
「だけど、仮にここの当主と同一人物だったとして、年が合わないよ?」
「そうなんだ。それがまずひっかかる。今、桜に動いて貰っているけど」
――判りました、玲様。各務家の歴史とその人物、そして"刹那"について、まず各務家の給仕から情報を仕入れてきます。
「桜ちゃん…大丈夫なのかな?」
「煌が居れば、僕の結界が有効になるから、後で回復させる。桜には悪いけれど、櫂がこうなっている以上、見えないものを切り崩して、敵味方を選別していかないと行けない気がするんだ、そう…儀式は明日だから」
芹霞は唇を噛んだ。
「間に合うかな…櫂」
「ねえ芹霞……」
間に合わなかったら――
「なあに?」
君は僕のことだけを考えてくれるかい?
永遠に――。
「…いや、何でもない」
僕は――言葉を呑み込んだ。