あひるの仔に天使の羽根を
須臾は千歳を嫌っているらしいが、俺は好意を持っていた。
桜を介抱して心配してくれた優しい奴だから。
この先、義弟となる可能性を秘めた存在でもある。
胡散臭い各務の中で、唯一人間らしさを感じた相手。
先刻まで生きて会話していたというのに、なぜ突然…。
――用は判ったから、さっさと消えて!!
"消えて"
どくん。
俺は、解放された闇の力のことを思い出す。
俺の力を使うことが出来るらしい須臾。
嫌な予感――だった。
だけどそれを否定したい、俺の意識。
言葉のアヤだろう?
それでも何故か鬩ぐ俺の心。
「死因は?」
「外傷はありません。従医の榊様がいらっしゃらないので詳細は…」
俺は立ち上がった。
「玲の部屋に案内してくれ」
玲ならば。
きっと死因くらいは判別出来るだろう。
そしてあいつなら。
俺の闇の力が関係あるかどうか判断つく。
そう…須臾が関係あるかどうか判るだろう。
今の俺は、主観に左右されすぎて、客観的な判断を下せないから。