あひるの仔に天使の羽根を
「芹霞……お前、いい加減、人を振り回すのをやめろよ。刺激求めて遊びたいなら、俺とは無関係な処でやれよ。須臾が不安がっているんだ、人の恋路を邪魔するな」
それくらいはっきり言わないと駄目な女なんだ、芹霞は。
たけど反面、言い過ぎたような気もしてくる。
玲の顔が険し過ぎて。
ああ、そうだ。
俺が玲と芹霞をくっつけてやろう。
「お前、玲はどうだ?」
玲なら優しいから、俺みたいなこんな言葉は選ばない。
玲なら大丈夫だ。
「お前が玲とくっつけば、須臾も安心するし一石二鳥なんだがな」
玲なら――全て上手くいく。
――後悔するなよ、"櫂"。
ずきん。
何故か胸が痛む。
そんな中で、玲の顔は怒りに歪んでいき、芹霞を庇うようにその耳を塞ごうとした。
俺は玲の行動が判らなかった。
玲が行動を起こさないから、俺が動いて言ってやったのに。
芹霞が玲の手を払って、俺を見た。
「ねえ櫂。
櫂は……あたしを嫌いだった?」
それは真摯な瞳で。
――後悔するなよ、"櫂"。
ずきん。
何故――俺はこんなに胸が痛む?