あひるの仔に天使の羽根を
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俺が遅れながら、いつも集まっていた部屋に戻った時、
「馬鹿言うんじゃねえッッッッ!!!」
煌の怒声が響いた。
ドアを開ければ、煌が須臾の胸倉を掴んで、その煌を桜と遠坂が後ろから羽交い絞めしていて。
向こう側の壁には、久遠が冷たい面持ちで背を凭れさせて傍観している。
俺は慌てて須臾の元に駆け寄った。
「煌、どうしたんだ!!?」
すると須臾は悲しげな顔で俺の腕に縋りついてきて、煌は烈しい怒りを露にして、今度は俺に掴みかかろうとする。
同時に桜の蹴りが煌の頭に直撃し、煌は唸りながらしゃがみこんだ。
俺は、恐いを連発する須臾を片手で抱き締めながら、至って優しく煌に、その行動の理由を問うた。
「櫂……お前――
芹霞と玲をくっ付けたって本当か?」
褐色の瞳は、激し過ぎる怒りに潤んでいて。
「その女が勝ち誇って言ったんだ。
芹霞は玲のもの、それを手助けしたのはお前だって!!!」
俺はどう言い繕っていいのか迷い、どもった。
それだけで煌は察したようだ。
「なんで、だよ!!?
お前……俺が芹霞を好きなの、知ってたんじゃねえのかよ!!?
どうして、玲!!!?
なあ、どうして俺じゃねえの!!?」
煌は半狂乱になっていた。
俺はまず落ち着かせようと、静かに言い聞かせることにした。
「なあ煌…芹霞以外にも女は居るだろ。
だから……」
「芹霞以上の女はいねえよッ!!!
それはお前が十分判っているだろうがッッ!!!」
ずきん、呼応したように胸が痛む。
「どうしてお前が…どうして、なあ…どうしてだ!!?
俺は玲を嫌いじゃねえ、玲はいい奴だよ。
だけどよ…それとこれとは違うんだよ。
判っていただろう、櫂。判ってて、何でそんなことすんだよッ!!!
お前、俺のことは考えたのかッ!!
俺はどうでもいいのかよ!!!?」