あひるの仔に天使の羽根を
それは悲痛過ぎる叫びで。
共鳴したかのように、俺の心が壊れそうな感覚に陥る。
そんな時、ドアが開いて。
そこに現れたのは救世主なんかじゃなく、
「玲様…芹霞さん……」
2人は指を絡ませて手を繋いでいて。
纏う空気は、どことなく親密で。
それだけでどんな関係か想像がつき、そして2人もまた、煌の様子から事態を悟ったようだった。
「芹霞、なあ…違うよな、お前…玲を選んでねえよな?」
泣いているような笑っているような。
俺はそんな煌の、縋るような顔を見ていられなくて。
「煌……」
芹霞が覚悟を決めたように1歩前に出て、煌の瞳を逸らさず真っ直ぐに見据えた。
「ごめん…。あたし…玲と付き合うことにした」
「な!!!」
「ごめん、煌……」
「せ…りか…俺じゃ駄目なのか?」
胸をつくような煌の声。
それに返る声はなく。
煌の顔は、烈しい悲哀に包まれて。
「なあ…お前に告白したのは俺が先なんだぞ?
なあ…お前、お前から俺に唇ちゅうしたよな?
盛り上がったのは…やっぱ俺だけだったの?」
震え過ぎて、安定しない声音。
"唇ちゅう"
俺の心が、軋んだ音をたてた。