あひるの仔に天使の羽根を


「なあ……俺、長期戦覚悟だとは言ったよ、確かに。

お前が違う男の元に行っても、俺は想い続けるって言ったさ。

だけど…だけどさ、こんなに早く……お前からのキス…貰うトコまできてたのに…それはほんのちょっと前のコトなのに…いきなりそりゃあねえだろ?」



玲は……唇を噛んでじっと煌を見ている。



「なあ、芹霞――…。

付き合わなくてもいいよ、今まで通りでいいから…俺のトコ来いよ」



煌は泣きながら手を伸ばす。



「俺……好きなんだよ、本当に好きなんだよ。好きで好きで溜まらねえんだよ。

俺、今まで通りで我慢するから…せめてまだ今は…誰のものにもならないでくれよ。

なあ、俺……玲みたいな"王子様"じゃねえけど、その分玲以上に優しくするから。お前の嫌がることは絶対しねえから」



芹霞は……動かない。


ただ――泣いている。



「芹霞、来いよッッッ!!!!」



慟哭のような叫びに、芹霞の顔が耐えられないというように歪んだ時、玲がその芹霞を攫うように腕に抱く。


「煌……。

僕だって本気だよ。

言っただろう、僕はこのまま終わらない、限界だって。


お前に渡さない。

僕は……どんなことをしても、芹霞が欲しい」



「玲、てめえ!!」



「煌だって判っていただろ、僕の状態が!!!

芹霞は僕を選んだんだ、諦めろッ!!!

頼むから、引いてくれッッッ!!!」



それは玲の慟哭。



煌は――




「ああああああああ!!!」




言葉にならない声を腹の底から搾り出して、部屋から出て行ってしまった。






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