あひるの仔に天使の羽根を
「煌ぉぉぉぉッッ!!!」
芹霞が泣きながら後を追おうとするのを、玲が悲痛な顔で引き止める。
「玲、離して、煌が煌がッッ!!!」
「駄目だ、行かせない」
「煌が泣いているのッッッ!!!」
「………」
「あたしは、煌を傷つけたくない!!!」
芹霞の絶叫を聞きながら、玲は静かに笑う。
「じゃあ……僕は傷ついてもいいの?
僕なら…泣いても構わないの?」
芹霞の泣き声が、瞬間止まる。
「僕は、煌に負けない程、君が好きだよ?」
今にも消えてしまいそうな、儚いその微笑みに、
「ずっとずっと、君が好きなんだよ?
君を僕だけのモノにしたくて仕方が無かった」
芹霞の顔が動揺を表現する。
「…判ってよ、芹霞。
僕だって……」
掠れきった声が、静寂に響き渡る。
「僕だって、芹霞が好きで好きで溜まらないんだよッッッ!!!
そうじゃなかったら――
誰が煌を傷つけるかよッッッ!!!
あいつの気持ちを判っていて、
誰がこんな形であいつを突き落とせるかよッッ!!!」
堰を切ったかのように玲が吼えた。
「僕は芹霞を渡さないッッッ!!!
僕は絶対離さないッッッ!!!」
荒れ狂う感情に翻弄されたように、玲は芹霞を掻き抱いて声をあげる。
その感情の波に、もう誰も声をかけられない状態だった。