あひるの仔に天使の羽根を

俺は――


良かったのか。


玲と芹霞をくっ付ければ、きっとまた笑顔の関係に戻れると。


だからと、煌の想いを犠牲にした。


だけどどうだ?


誰が笑顔だ?


「ふふふふ、皆私に楯突くからよ、いい気味」


それは――須臾だけで。


確かに須臾には笑っていて欲しい。


だけどその為に、どれ程の人間の心を俺は潰している?


須臾の心を手に入れたい為に。


俺は誰を傷つけている?


それに――俺は満足なのか?


本当にそれでいいのか?


人の想いというものは、誰も手出しできない神聖なもの。


俺はそれが判っていたんじゃなかったのか?


どうして俺は、須臾が同意しているからと、煌の想いを軽んじた?


玲をここまで追い詰めたのは俺だ。

煌を激しく傷つけたのは俺だ。


どうしてそれでいいと思った?


どうして芹霞を玲に押し付けることで、事態を改善出来ると思った?


ずきん。


"押し付ける"


その言葉にまた頭が脈打って。


どこかで同じことを経験したような気がしてきた。


まるで無限ループから抜け出せないような、不安定な心地になる。


俺は何をしたいんだ?


ああ――


俺は……?




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