あひるの仔に天使の羽根を
 


玲の気持ちは判る。

好きな女を誰にも渡したくない気持ち。

例え誰を傷つけても、譲れない心は。


だけど今の俺には。


煌の心の叫びが俺から離れない。


それが判りすぎて、だから心が痛すぎて。


目の前で、他の男に奪われるのを見た苦悶。


膨れあがる嫉妬、妬み。


それは――


先刻まで玲に感じていた心に他ならず。


俺は、須臾が居るのに。


じゃあもし須臾が居なかったら?


玲の胸で泣く芹霞を見る。



須臾が居なかったら、多分俺は――



「櫂、私が好きよね」



須臾が無表情で俺を見ている。



「……ああ」



何故か……


"好き"


その言葉を出すのが躊躇われた。



あれほど。


"好きだ"


"愛している"


"永遠だ"


須臾に向けたのに。


今は、それが向けられない。



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