あひるの仔に天使の羽根を
今、俺の意識は須臾にはなかった。
玲の元にいる芹霞に向いていて。
ああ……。
唯の幼馴染の女に、俺は執着しているんだ。
芹霞が俺に執着しているのではなく、俺が芹霞に執着しているんだ。
俺は芹霞を離したくないんだ。
幼馴染故の独占欲かも知れない。
誰かに取られると思うが故の男の征服欲かも知れない。
それとも、もっと見当外れの理由かもしれない。
俺にはその判別は出来なくて。
須臾以外に心奪われているその事実が、決して許されない…断罪すべき罪を犯していると判っていても。
それでも俺は、走り出す心を止められなくて。
本能めいた欲求が、理性に勝ってくる。
須臾も欲しい。
だけど。
芹霞も欲しい。
最低だ、俺。
最低すぎる。
諦めろ。
俺には須臾が居る。
芹霞は玲のものだ。