あひるの仔に天使の羽根を
 

ふわり。


あたたかい温もりがあたしを包む。


玲くんがあたしの腰に手を回して、彼の元に引き寄せていた。


――ずっとずっと、君が好きなんだよ? 


あんなことがあった後だから、びくっと身体が反応して妙に緊張してしまう。


鳶色の瞳は哀しげな光を放ちながらも、何か思案しているようで。


「その儀式というものが終わったら……」


不意に届いた櫂の声。


「俺には、皆と一緒に過ごす時間はあるんだろうか」


そんな抑揚のない声に。


「あるわけないわ。櫂は私以外との接触は許されない」


接触。


櫂と須臾の手の絡み愛やキスシーンが思い出され、吐き気がしてくる。


そんな時、あたしの手が玲くんに強く握られた。


心臓に悪いことばかりしでかしてくる玲くん。


出来るならばもう少し、手を握るのは控えたい心地で。


彼を不快にさせない程度に少しずつ距離を取ろうとするけれど、それさえ見越されているのか、それを許さないというように、玲くんは更に力を込めてきて。


皆の前で、堂々と指を絡ませる繋ぎ方に変えてきた。


「――…!!!」


こんな時だというのに――


汗がぶわっと出てきそうなくらい意識してしまって気が昂ぶり、隠すように思わず俯いてしまった。


絶対、あたしの顔は真っ赤だ。



「――…考える時間が欲しい」



そんな櫂の声が、あたしの緊張を解いた。




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