あひるの仔に天使の羽根を
「れ、玲!!?」
あたしの声が大きく裏返る。
「だって僕達恋人なんだから、当然でしょう?」
玲くんはにっこり微笑んだ。
世の恋人というのは、そういうものなのか?
いやいや、性急すぎるだろう。
「だ、だけどね……、ほらここのルールっていうのがあるでしょう?」
玲くん、一体何を言い出す!!?
あたしは初めて、此の地の不可解なルールに感謝した。
例え樒にルールを変える力があるとしても、いくら何でも自分の家で、いちゃいちゃされて、いい気はしない。
絶対許さないはずだ。
それが普通だ。
しかし。
「ね、お母様、いいでしょう? 須臾の最後の我儘聞いて下さいませ。この方達の愛を深めさせてあげて?」
各務の家の者は普通ではなかったみたいで、
「判ったわ。だけど今日だけだけど」
言外に、儀式が済んだら出て行けという意味を含ませて。
待て待て待て!!!
良いわけないだろう。
あたしは久遠に助けを求めたが、久遠は冷たいような面持ちでこちらを見たまま、微動だにしない。
久遠は使えない。
「れ、玲くんあのね……」
こうなったら、言い出しっぺに取り消して貰おう。
だけど――
「結構ですよ。東京帰れば、ずっと一緒に居られますから。というより、僕がずっと離しませんし」
笑顔でそんなことを言い出して、
「良かったね、ふふふ。今日の"夜"が楽しみだね」
何故"夜"を特定し、わざとらしく強調する!!?
「まあ…明るい時間帯でも、僕は構わないけれど。君がよく見れるしね」
しかもどうして、その尋常じゃない程の色気を発動!!?