あひるの仔に天使の羽根を
冗談だよね、玲くん!!?
「離さないよ……芹霞」
到底――
冗談にも思えない、熱く潤んだ鳶色の瞳。
笑みの中に、揺らぎない強い意志を感じて。
いつもの柔和なものではなく、それは強固にあたしに絡みつく。
ざわりとした妙な興奮すら生じさせ、あたしは身動きが出来ない。
「好きだよ……?」
玲くんはそう掠れたような甘い声で囁くと、
更に唇を寄せてきて……
あたしの耳朶にかりと歯をたてた。
吐息のような響きと耳の刺激に、背筋に本能的な電気が走る。
「ンや……!!!」
どこから生じたのか判らない甘ったるい声に、場がしんとなってしまったことが、もうどうにもこうにも恥ずかしくて堪らなく。
もう絶対、あたしはお嫁にいけない!!
それでなくても玲くんの色気に腰砕けになりそうなのを必死に堪えていた時に、不意打ちを食らった直後の公衆の面前での羞恥心。
玲くん――
今まで以上に、なんでそんなに意地悪なの?
どうしてそんなに艶めいた顔を見せるの?
何でそんなに嬉しそうなの?
"付き合う"って、そういうこと?
こんなのが続くの?
やっとのことで詰るような眼差し向ければ、
「続きは、部屋でね……?」
玲くんの撒き散らすような盛大な色気が炸裂して、あたしの自制心は脆くも崩壊した。
「芹霞……少しの間…お休み?」
そんな小さな玲くんの声を最後に、耐久性のないあたしの意識は、いつもの如く薄れていってしまった。