あひるの仔に天使の羽根を
「"お嬢様の声がありました。聞き違えじゃありません"
誰だと思う、神崎」
「え? え?」
「"芹霞さんから石を受け取った方です"」
「須臾!!?」
由香ちゃんは堅い顔をして頷く。
「な、何で!!? 須臾は各務の娘だよ!!?」
あたしは叫んだ拍子にベッドからずり落ちてしまい、這い上ると思わず正座した。
すると由香ちゃんも同じように正座して、あたしの真向かいに正座した。
まるでお見合いだ。
「……同じような部屋だったんだろう?」
確かに須臾の部屋と、刹那の娘の部屋は、重苦しいピンクの部屋だった。
「でもそれで同一人物だと断言する材料にはならないわ。須臾の部屋は趣味、娘さんの部屋は年相応かも知れないし」
「もし……あの色が、"退行"させる為に必要なものだとしたら?」
「"退行"?」
「そう。"若返り"のために必要な手段だということ」
「ふへ!?」
「ただそう言い切る為には、確かに裏付けが必要だ。今師匠を始めとして葉山も情報集めている。今、師匠がプログラム組んで対策練ってる。
それからね、葉山が情報集めてきたんだけど」
あたしは続けられる言葉に緊張して、息を飲む。
「各務樒は後妻らしい。だから須臾と久遠と…死んだ千歳の実母ではない。皆それぞれ母親は違うらしい」