あひるの仔に天使の羽根を
「じゃあ樒さんの旦那は、久遠、須臾、千歳…彼の実母でもないのなら、少なくとも4番目の奥さんって言うこと?」
「そうだろうね。先妻は病死。皆揃って原因不明でね。聞けば千歳くんだって、原因不明で死んでしまったじゃないか。同じように片付けるみたいだよ」
由香ちゃんの顔は、少しだけ怒りが混じっている。
「彼女達は全員、享年16歳だったみたいだ。今の……須臾と同じ年だね。
各務の血を引く者は、16歳以上は生きられないらしい。だから……外部から女を迎えたそうだよ?」
「外部からって……じゃあ早死した女性達は、内部の人ってこと?」
そこまで女性に溢れた家系とは思えないけれど。
「実はね、各務は……生まれる子供には、双子が多いらしい」
「双子?」
あたしは無意識に、旭と月を思い出す。
「そう。しかも必ず片方が畸形(きけい)なんだ。姿形だけではなく、性格も含めてね」
「………でも、ここには1人しかいないよ?」
「うん。それも今調査対象さ」
そこまで言った時、何かの機械音が3回短い音を鳴らした。
「おっ。地形について何か情報が出たみたいだね、師匠の処に行くか。ここはボクが使っていた部屋なんだ。師匠は作業場を君の部屋に移して、そこで作業している」
由香ちゃんが腰を上げたから、あたしもそれに続く。
「由香ちゃん、ここの洗面台借りて、顔だけ洗って行ってもいい?」
あたしがおろおろしている間に、皆はしっかり働いて居たんだ。
やるべきことは山にある。
あたしは、自分のことばかりは考えていられない。
気分を変えたくて。
もっともっと、しっかりしないと。
「判ったよ。君の居た部屋は、ここから3つ隣だからね」
そう由香ちゃんは笑った。