あひるの仔に天使の羽根を
ああ――
自惚れすぎたのか、俺。
もしかして芹霞は俺に心動いてきたんじゃねえかと、天狗になりすぎたそのツケか?
俺が久遠を迎えに行った僅かな時間に、
――急転直下、青天の霹靂。
いつも思う。
どうして俺は、事前に危機を感じ取れないのかと。
気づけば――
芹霞は既に玲のものになったことを知る。
しかも俺の嫌いな女に、笑われながら教えられたこの惨めさ。
絶対、嘘だと思った。
だって直前、俺は芹霞と――
――あたし…玲と付き合うことにした。
俺があんなに必死に芹霞に告っても、あんなに触れても手に入れられなかった芹霞が、玲にかかればなんと容易く。
それでも。
少しは進展していたんだよ、俺の勘違いじゃねえ。
芹霞が――
自分から俺にキスしたんだよ。
そこでようやく俺は――
皆と同じ始点に立てたと思ったのに。
取り柄がない胡散臭い色ばかり持つ俺が、
ようやく1つの自信をつけられたというのに。
――あたし…玲と付き合うことにした。
だけど、芹霞は俺を選ばなかった。
玲を選んで、玲の女になっちまった。
――なあ煌…芹霞以外にも女は居るだろ。
櫂、どの口で…んなこと言い出せるんだよ。
どうして協力すんのが玲なんだよ。
どうでもいいのかよ、俺も芹霞も。
そこまで軽い存在だったのかよ。
俺は友情も恋愛も喪失した。