あひるの仔に天使の羽根を
 
「……しよう?」


艶然と笑う女が、ひんやりとした手で俺の手を導き――

スカートの中の柔らかな太股を触らせる。


「しよう?」


女は俺の首筋に手を回し、俺の耳をぺろりと舐めた。


久々の"雄"の感覚に、俺は目を細める。



「そんなに……俺が欲しいか?」



好きだ、芹霞。



「うんうん」



濡れた目が俺を誘う。



――瞳の色が……

芹霞のものと似ている。


「俺が欲しくて仕方がないか?」



お前だけが欲しいんだよ、芹霞。



――髪の長さが……

芹霞のものと似ている。



「うんうん」



強く頷く女が、芹霞だったらどんなにいいだろう。


俺の心は、苦しみから逃れようとしていた。


女から――
無理矢理に芹霞を見出す。


壊れかけた芹霞が、一心に俺を求めてる。

俺が欲しくて仕方がないと、ねだってくる。



そう思えば、苦しみが和らぐ気がした。



いっそ――

俺も壊れてしまおうか。

苦しみだけを生む理性を全て壊し

何も拘束しない自由な本能に還ろうか。


8年前の、制裁者(アリス)時代が懐かしく思う。


今なら、戻ってもいいと思う。


人を殺しまくるのも、また一興。


この苦しみが少しでも楽になれるのなら。




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